カメレオンを見たくてアンバー山国立公園へ行く。下山中に陽が暮れ、街へ帰る交通手段無くなる。

行きに乗った車のフロントガラスは今にも割れそうだった。
行きに乗った車のフロントガラスは今にも割れそうだった。

昨日は一日かけてアンバー山国立公園の行き方を調べた。最初にツアー会社へ行ってみたが、車をチャーターする以外の手段はなく、しかも一人幾らではなく一台幾らの計算なので複数でチャーターしないととてもじゃないが払えない。白人の団体が何組かチャーターをしていたのが羨ましかった。こうゆうときはだけは一人旅の不利さを感じる。

 

次にタクシーの可能性を探ってみたが街から山を往復することはしていないそうで、山の麓まで片道なら可能だがやはりとても料金は高い。結局大勢の人に聞きまくって、一番安く行ける方法は山行きのタクシーブルース乗り場までタクシーで行ってそこからタクシーブルースに乗るということらしい。上手く行くか不安を感じながらもその方法にかける事にした。

 

朝宿を出発して、まず腹ごしらえ。おしゃれにクレープと紅茶。午前中の間にタクシーで乗り場に到着。しかし何もない場所、本当にこの場所であってるか分かる手段もない。大体誰とも言葉が通じている訳でなく山の名前とここへ行きたいと書いた紙を見せてるだけだから心許ない事この上ない。

 

マダガスカルの公共交通の時間がどんなものかこの日までに免疫はついていたので多少待つ覚悟はしていたが、しばらく待っても来ない。だが徐々に私以外の現地人も集まってきたのでこの場所が少なくとも乗り場であることは間違いなさそうだ。結局1時間以上待って正午頃に満員のタクシーブルースがやってきた。

 

今まで長距離のブルースには乗ってきたが短距離は初めて。長距離でもぎゅうぎゅうに座ってキツかったが短距離はそんなレベルではなかった。11人乗りの車に20人乗る、つまりちょっと大きめのワゴン車で半分は立ち乗りなのだ。いやもうこれ以上は乗れませんと思ってもどんどん途中で新しい客を拾う。

 

体を斜めに折り曲げた状態のまま乗り続け、車が集合している場所へ到着。てっきり山まで行けると思っていたがこの場所で又乗り換えがあるらしい。今度は普通の車で数人で出発するので値段はタクシー並み。ここでも又中々出発しない、経験上きっと同方向の客が揃うまで出ないのだろう。だが観光客は私一人、地元の人で山に行く人はあまりいないみたいで待てど暮らせど私以外車に乗ってこない。

 

入山時間は16時までなのでどんどん焦りが募った。ようやく出発した時は14時を過ぎていた。朝に出てまだ山に着いてない事実にもう既に心は折れ気味。さらに残念な事に車が着いたのは山の麓の村まで、他の客は皆ここで降りるので後は一人で登れということだ。山道は1本なので迷う事はないが国立公園の入り口までどのくらいあるのか分からない。

 

登っている途中雨が降ってきた。この山は一年中降水量が多いため植物の生育が良いと書いてあったのに雨の用意をしてなかった愚かな私、濡れてズボンは泥まみれになりながら歩き続ける。途中白人の団体がチャーターした4wd車とすれ違った。普通はもう帰る時間なのだ。

 

ここまで来て引き返す訳にはいかない。歩き続ける事25分、何とか入り口に到着。こんな時間に一人で歩いてきた日本人に係員達も驚いていた。アンバー山は入園料と案内してくれるガイドさんへのお金が必要。英語のガイドが一番高く、安い人が良いと言ったが規則で駄目とのこと。まあこれは仕方ない。それに結果的にこのガイドさんはとても良い人で、この後命の恩人になってくれた。

 

下山してくる白人客はちらほらいるが、これから登ろうとしているのは私一人。雨の中ここまでの強行軍で既に足が痛かったが、素晴らしい自然の中を歩いていると心は浮き立ち疲れも消えて行った。たくさんの動植物を見たかったがガイドさんが見つけてくれたのは何匹かのカメレオンだけ、それでも野生のカメレオンとの遭遇は苦労して来た甲斐があったと言える程心躍る時間になった。

2cmしかないけどこれもカメレオン
2cmしかないけどこれもカメレオン
鼻が紫色のカメレオン
鼻が紫色のカメレオン
カメレオンの歩く姿かわいい。
カメレオンの歩く姿かわいい。

 

運が良ければもっと色々な生き物に会えるらしいが時間帯と天候のせいか今回は小さいカメレオン達にしか会えなかった。それだってガイドのおじさんが信じられない観察力でそこにいると教えてくれなければ、自分一人でも何も見つけられなかっただろう。

 

雨の中どんどん道なき道を進んで行くおじさん。付いて行くのが精一杯。



山の入り口に戻ってきたのは16時45分。約2時間山を歩いた。5人いた係員は1人しか残っていなかった。本来なら16時で終わる所を私のために延長してくれたのだろうか。有難い。楽しかったがそれ以前に相当な距離を歩いていたので、すでに私の足は限界に近かった。ここから又麓の村まで相当な距離を歩かなければ行けない。

 

ガイドのおじさんともう一人の係員も同じ道で下山するようだが、彼らは全然疲れてないのでペースが待ったく違う。すぐに何百メートルも差が付いた。陽はどんどん落ちて周囲は薄暗くなって行く。明かりがないのでもし完全に日没したら完全な暗闇になってしまう。私は痛む足を引きずって必死に歩いた。一人になるのが恐かったが二人に待ってくれとも言えない。しかしガイドのおじさんはのろのろ歩く私を心配してるのか、たまに振り返って付いてきてるか確認してくれる。そして見失わない距離を終止保ってくれていた。これは本当に有難かった。もしこのまま暗くなって道に迷ったら大げさでなく危険なのだ。

 

ほとんど何も見えなくなった頃、麓の村に着いた。私を待っていてくれたおじさんに街まで帰る方法を聞くと、明日の朝までタクシーブルースは来ないと言う。もちろんタクシーももう来ない。麓の村の名前はジョフルヴィルと言うのだが、もはや真っ暗で何処に何があるのか分からない。私の目には宿があるような村にも見えなかった。言い知れぬ不安を感じながら藁にもすがる思いで何処か泊まる所はないか聞くと、ちゃんと村に宿はあって案内してくれた。もしこのおじさんがいなければどうなっていたか、本当に危ない所だった。私を案内するとおじさんは何事もなかったかのように去って行った。

 

ジョフルヴィルの宿:CHEZ HENRIETTE

 

びしょ濡れで着替えもなく、山の夜は気温が急激に下がって震えるくらい寒かった。ジョフルヴィルの宿は小さな村にしては悪くなかったが料金はディエゴのホテルの1.5倍。晩飯も食べると2倍になるが、昼も食べれず死ぬ程腹が減っていたのでどんなに高くても食事出来るのは嬉しい。シャワーもお湯が出てくれ、冷えた体を温める事が出来た。浴室に亀がいて、私がシャワーを浴びていても微動だにしない。もう一度濡れた服を着るとすぐに体温が下がってくるのでずっとバスタオルを巻いて過ごした。

 

念願の夕飯はココナッツチキンと野菜炒め、紅茶。美味しいと言える程の料理ではなかったがあっという間に平らげると少し元気が出た。

 

こんな所に宿泊するのは私一人だろうと思っていたが、他に2人のスペイン人男性が泊まっていた。彼らは凄い荷物で、鍋まで持って旅していた。お互いのガイドブックの話になって、スペインには良いガイドブックがなく皆大抵ロンリープラネットを使うと教えてくれた。私の地球の歩き方を見せると写真の多さに驚き、ビジュアルに優れたガイドブックだと言っていた。ロンリープラネットは確かに写真が少ない。両方使ったことがあるが、分かりやすいのは歩き方、情報の多さと正確さはロンリープラネットという感想だ。ロンリープラネットは全編英語なので、そこをクリア出来る人は皆こちらを使うだろう。

 

疲れが極限だったので、長話はせず(英語なので話しているだけで疲れる)、ベッドに入った。まだ濡れているので寒さと不快さが消えなかったが疲れの方が強くすぐに眠りに落ち、朝起きたときはスペイン人2人はもう出発していなかった。

※ホームページ内の写真は貸し出しを行っております。ご希望の方はメニューのCONTACT/お問合わせ/撮影・カメラレッスン依頼からお問い合わせください。

 

 

 

 

background picture : Madagascar nosy iranjaマダガスカル ノシ イランジャ

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